高齢者が住む家や子育て中の家庭では、玄関付近に「スロープ」を設けることを検討する方が増えています。
階段を使いにくい人でも、スロープがあれば安全に移動が可能です。
しかし、傾斜が急すぎると危険です。
この記事では、外構工事でスロープを設ける際の注意点を解説します。
スロープの役割とは?
ご自宅の外構部分にはまだ普及していませんが、ショッピングセンターや病院などの施設では、入口に「スロープ」が必ず設置されています。
スロープの役割は、足腰が弱い方やベビーカー、車いすを使用する方が安全に施設へ出入りできるようにするためです。
大型施設や公共施設では、障害のある方でも利用しやすいようにバリアフリー化を目的としてスロープが設置されています。
また、階段があると移動が難しい子連れの方にも必要な設備です。
では、なぜ自宅にスロープの需要が高まっているのでしょうか。
その背景には、日本が急速に「高齢化」していることが挙げられます。
現代社会でバリアフリー設計は必須
高齢者と同居している方や、将来のためにスロープや手すりなどのバリアフリー設計は住宅に欠かせない存在です。
特にリフォームで外構工事を行う際には、トイレや浴室への手すりの追加だけでなく、段差をなくす内装の見直しを行う方が増えています。
外構工事では階段をスロープに変更したり、階段に加えてスロープを追加したりする工事が多くなっているのが現状です。
介護車両の乗り入れを考慮して、駐車場を含むエクステリア全体を工事するケースも増えています。
バリアフリー設計は介護や障害があるためだけでなく、生活を便利にするためにも大きなメリットがあります。
スロープを外構工事で設ける際の注意点
外構工事でスロープを設置する場合、次の注意点を踏まえて依頼しましょう。
注意点は以下の3つです。
1. スペースの確保が重要
スロープは坂道のような設計になるため、一般道路と住宅との間の距離が短い場合、勾配が急すぎるため設置が難しくなります。
しかし、距離が短い場合でも、玄関までの距離を延ばして緩やかに設計することも可能です。
いずれにせよ、スロープの特性上、勾配に配慮する必要があるため、外構周辺のスペースを確保する必要があります。
場合によっては、庭や植栽の一部を削る必要があるかもしれません。
2. 雨風を避ける設計が理想
スロープを車いすやベビーカー用に設計する場合、雨や風を避けられる設計が理想です。
タイヤが滑りやすくなったり、風に煽られて移動が危険になるのを防ぐためです。
完全にスロープ部分を覆うことは難しいですが、特に介助が必要な方のためには、簡易的な雨よけを設けるなどの配慮が望ましいでしょう。
3. 素材選びが重要
車いすやベビーカーでの移動のためにスロープを設ける場合、タイヤが滑りにくい素材を選ぶことが重要です。
スロープは見た目も重要ですが、タイルなど滑りやすい素材を使用すると危険です。
勾配もあるため、滑りやすいと上りにくくなります。
安全性を確保するためにも、通路の素材選びは慎重に行いましょう。
スロープの設置には、これらの注意点を考慮することが大切です。
注意を怠ると、スロープの利便性が低下してしまいますので、しっかりと計画する必要があります。
スロープの勾配には基準に注意
外構工事でスロープを設置する際には、「勾配の数値」に注意する必要があります。
実は、バリアフリー化に寄与するスロープの勾配には一定の基準があるのをご存じでしょうか。
この項目では、勾配の数値について詳しく解説します。
建築基準法の数値とは
スロープの勾配については、建物の基準を定める「建築基準法」で基準が設定されています。
具体的には、「勾配は8分の1を超えないこと」と、「粗面か滑りにくい材料で作ること」が規定されています。
つまり、滑りやすいスロープは作れないことになっています。
具体的に説明すると、10メートルの長さをスロープで上る場合、傾斜の角度を考慮して1.25メートルの高さが必要です。
しかし、この数値の傾斜でも実際にはかなりの角度です。
そのため、建築基準法では8分の1となっていますが、実際の外構工事では12分の1以上の緩やかな勾配で設置されることが多いでしょう。
特に、介護で車いすを押してスロープを上がる場合、勾配は緩やかであるほどメリットがあります。
基準をクリアしていても、自分で車いすを操作して上がることを考えると、車いすを使用する本人に合わせた勾配を設定する必要があります。
出入口の見直しも重要
スロープの主な目的は住宅と外との出入りをスムーズにすることであり、スロープ自体はそのための通路に過ぎません。
車いすで頑張って勾配を上ると体力を消耗します。
さらに、玄関の扉が重いと出入りが大変です。出入りのしやすさにも配慮しましょう。
スロープの設置の際には、玄関をドアタイプから引き戸タイプに変更することをおすすめします。
引き戸タイプなら、車いすの方が自分で開けやすいです。
玄関の工事が難しい場合は、リビングへの出入りを考えるなど、出入口全体を見直すことが大切です。
特に介護車両が出入りする場合、介護スタッフが働きやすい環境にするための配慮も必要です。
あえて玄関ではなく、リビングの大きな窓を出入口にすることで利便性が高くなるケースもあります。
また、勝手口を改良する方法も検討できるので、専門業者に相談することをおすすめします。
まとめ
外構工事でスロープを作る際の勾配や設置の注意点を解説しました。
スロープの工事は外構全体を大きく工事することがあるため、費用がやや高くなることもあります。
しかし、高齢化世帯への配慮や利便性を考えると、安全性の高いスロープを設置することは大きなメリットがあります。
ぜひこの機会にご検討ください。